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Ghost Apple -People In The Box- レビュー

Ghost Apple、直訳すると幽霊のリンゴ、どことなくはかなさを感じさせるこのアルバムは、People In The Boxのメジャーデビュー作品になります。

 

Ghost Apple

Ghost Apple

 

 

People In The Boxはギターボーカル、ベース、ドラムという一般的な3ピースロックバンド編成ですが、バンドを特徴づけるのは変拍子などを用いたアレンジの緻密さ、歌詞から漂うおぼろげな生と死の匂いがあります。

本作はそれらの特徴が見事にひとつの作品として結実された傑作となっていると感じます。

 

曲数自体は7曲と少な目ですが、タイトルを見ると月曜日、火曜日、水曜日、、、日曜日と曜日を冠した曲が並ぶコンセプチュアルなつくりになっており、日曜日まで聞きとおすとまた月曜日に戻ってループして聞きたくなるようなそんな中毒性があります。

月曜日のイントロと日曜日のアウトロにこのループを助長するような仕掛けが入っているので、これはもう確信犯と言えますね。

 

それでは各曲の特徴を少しずつ見ていきましょう。

 

1曲目、月曜日/無菌室は言ってしまえばあまりPeople In The Boxらしくない穏やかで綺麗な楽曲で、変拍子も恐らく使われていません。それでもこの曲は非常に心惹かれる退廃的な美しさがあります。


People In The Box - 月曜日/ 無菌室

 

2曲目、火曜日/空室は跳ねるリズムが特徴的な曲で、曲の後半にかけては轟音とともに疾走していくセクションもあり、People In The Boxにしては珍しい爽快感も感じられる一曲になっています。

 

3曲目、水曜日/密室はメロ、サビでの性急な曲調から大サビになるとゆったりとした美しいメロディに切り替わる一曲の中での変化が非常に大きい曲です。そのようなリズムセクションのアレンジが秀逸なのに加えてメロディもポップで素晴らしいものがあり、何度でも聞き直したくなる魅力にあふれた楽曲になっています。

 

4曲目、木曜日/寝室はひたすらダウナーで、曲名に寝室とあるように悪夢や悪夢を見た翌日の気怠い心理状態を表しているような楽曲です。

 

5曲目、金曜日/集中治療室はイントロから轟音のギターが鳴り響く勢いのある曲ですが、曲全体としてはどこかメルヘンチックな印象を受けます。ただ、集中治療室とあるように、歌詞のところどころに強く死の匂いを感じさせる言葉がちりばめられており、一筋縄ではいかない楽曲に仕上がっています。

 

6曲目、土曜日/待合室はアコースティックな響きを多く含んだ穏やかな楽曲ですが、曲調や歌詞から現実と幻想の狭間にいるような感覚を強く与えられます。切実に歌われる、「でもあと一錠だけ」という歌詞はいったい何を欲しているんだろう、などなど引っかかりが多い楽曲です。

 

7曲目、日曜日/浴室は一言でいうとこれぞPeople In The Boxといった、3ピースとは思えない緻密なリズムアレンジとバンドのダイナミックさを感じさせてくれる曲になります。曲の終わりには月曜日/無菌室へとつながっていくようなアウトロが流れます。