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HUM Pristine-Reference (Universal Fit)

[レビュー] HUM Pristine-Reference (Universal Fit)

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■製品仕様・特徴など

Doloresと同様に、メーカーから詳細な製品仕様については公開されていませんが、内部構造や音導管を見る限りはBAのみの 2ドライバー 2ウェイ の設計になっていると思われます。

クロスオーバー回路に通常のイヤホンの回路では見たことが無い大き目の電解コンデンサらしきものが使用されており、内部配線自体も太目です。

HUMのイヤホンとしては最も古いモデルで、2ドライバー 2ウェイ とDolores以上にレス・イズ・モアの思想が色濃く出ているように思います。

■試聴環境

DAP : Cayin N6ii-Ti (R01モジュール)

・接続 : HUM CX1 (絹巻 初期Ver.) 2pin - 4.4mm5極バランス

・イヤーピース : final type E

■サマリー

・[モニター] - - - 〇 - [リスニング]

・帯域バランス : 中域 > 低域 > 高域

・音場 : [広] - - 〇 - - [狭]

・定位 : [正確] - - 〇 - - [曖昧]

・解像度 : [良] - - 〇 - - [悪]

・音漏れ・遮音性 : [良] - 〇 - - - [悪]

・装着感 : [良] 〇 - - - - [悪]

■全体的な音質傾向

一言で言うと、音が太く厚みがあり、エネルギッシュで迫力のある印象の出音です。

各音のエッジ、粒立ち感については多少控えめで柔らかく調整されています。

音の太さについては、中低域~中域にかけての音がかなり太く厚みがあり、ボーカルやギターが非常に生々しく鮮やかに鳴ります。

この出音が他のイヤホンと比較した際のPristine-Referenceの最も特徴的な点になります。

音場の広がり、定位、解像度はいずれも悪くはないものの、精緻な定位・解像感で丁寧な鳴りで聞かせるというよりも、まとまりがあって音の厚さ・勢い重視な鳴り方に感じられるため、音楽を分析的に聞きたい人やスッキリとした音が好きな人には合わない可能性があります。

上記のような傾向から全体としてはリスニング寄りの出音で、特に躍動感のある音源を楽しみたい時にはピッタリです。

純正ケーブルとの相性が良く、というよりも、それ以外のケーブルに変更すると最大の特徴である中低域~中域の厚みがあり鮮やかな出音が損なわれる傾向が有る印象です。

■帯域バランス

中域 > 低域 > 高域

帯域バランス的には中低域~中域が他帯域よりかなり目立ち、この帯域のボーカル、楽器は非常に生々しく鮮やかに鳴ります。

一方で高域については多少太目の鳴らし方であるものの量が控えめなため、あまり主張してこない印象です。好みによっては高域が気持ちよく抜けていく感覚が足りず、それを篭っていると感じる人もいる可能性があります。

低域は中域にかぶさることは有りませんが十分な量が出ており、ある程度空間への広がりも感じられる自然な鳴り方です。

■音場・定位・解像度

音場は広くも無く狭くも無くイヤホンとしては平均的な広さです。

ただし、各音が太く厚みがある傾向のため、ボーカルや各楽器の音像が大きく感じ、空間にみっちり詰まっている印象を受け、人によっては暑苦しい鳴り方と感じる可能性も有ります。

個々の音の詳細な描写については注意して聞くと十分にされており、分離感も悪くないが、音の太さ、厚みの方が印象的過ぎて、全体的に解像度が高いとは感じにくいです。

■音漏れ・遮音性

イヤホン本体にベントや継ぎ目が無く、耳にもしっかり収まるため、密閉型のイヤホンとしては平均よりも高い音漏れ耐性と遮音性を持っていると感じます。

騒音化での移動(電車など)を伴うポータブル用途でも快適に利用可能なレベルです。

■装着感

主に筐体の厚みについて個体差があるようですが、私が所有しているものに関してはかなりコンパクトで、耳にすっぽりと収まり出っ張ることもありません。

耳が小さめの方でもあまり苦労することなくフィットするのではないかと思います。

重量は樹脂製のため軽く、耳に当たる面も滑らかな曲線となっているため、長時間の装着でも痛みや違和感などは感じにくいです。

ステム部が太目かつ滑らかなため、使用できるイヤーピースがある程度限定される可能性がありますが、基本的にはほとんどの人が付属の純正イヤーピースで十分なフィット感を得ることが可能だと思われます。

■その他、備考

試聴時に、他のイヤホンとは明確に異なる中低域~中域の鳴り方に衝撃を受けました。

また、少ないドライバ数でも多ドライバ機以上に自分にとって良いと感じる音を鳴らす製品が存在するということに気づかされ、それ以降はドライバ数や構成は気にせず、出音のみで製品を判断するきっかけを与えてくれた製品です。