SONY IER-Z1R
[レビュー] SONY IER-Z1R
■製品仕様・特徴など
3ドライバー 3ウェイ とこの価格帯のマルチドライバ機としてはドライバ数は少なめですが、ドライバの組み合わせが特徴的で、低域~中高域が12mmダイナミックドライバ、高域がバランスドアーマチュア、そして超高域が5mmダイナミックドライバと他のイヤホンでは見たことの無い組み合わせになっています。12mmダイナミックドライバに割り当てられた音域が広く、ダイナミックドライバ寄りの音がするハイブリッド機との予想が立ちますが、実際の音はどうなのでしょうか。
再生周波数帯域も 3 Hz ~ 100,000 Hz と非常に広く期待が高まります。
■試聴環境
・DAP : Cayin N6ii-Ti (R01モジュール)
・接続 : WAGNUS. Zillion Sheep NU-3 MMCX - 4.4mm5極バランス
・イヤーピース : ハイブリッドイヤーピース(純正付属品)
■サマリー
・[モニター] - - - 〇 - [リスニング]
・帯域バランス : 高域 = 低域 >= 中域
・音場 : [広] - 〇 - - - [狭]
・定位 : [正確] - 〇 - - - [曖昧]
・解像度 : [良] - 〇 - - - [悪]
・音漏れ・遮音性 : [良] - - 〇 - - [悪]
・装着感 : [良] - - 〇 - - [悪]
■全体的な音質傾向
一言で言うと、ハイエンドイヤホンに求められる基本性能が高く、比較的バランス良くまとまった万能機です。
各音のエッジ、粒立ち感、音の太さなどについては、12mmダイナミックドライバに割り当てられた低域~中高域に関しては中庸で自然にまとめられている印象ですが、バランスドアーマチュアと5mmダイナミックドライバが割り当てられた高域~超高域については、非常に伸びの良さを感じる一方で、線が細く、金属質で硬質な鳴り方をしている印象です。
各ドライバが担当する帯域間のつながりの悪さや違和感を感じるほどでは無いものの、楽曲によっては高域が悪目立ちしたり、刺さるとはいかないまでもシャリシャリと耳障りに聞こえることもあります。
音の響き、余韻の表現はイヤホンとしてはかなり優れているという印象で、特に良い録音・マスタリングの音源を聞いた場合、音場の広さと相まって空間性や奥行を感じる立体的な鳴り方をします。
全体的には弱ドンシャリ傾向かつ多少演出がかった派手目の音作りがなされている印象ですが、従来のSONYのドンシャリイヤホン群と比較した場合には優等生的な音作りです。
原音忠実性が低いとまではいかないものの、どちらかというと音源の持つダイナミクスを強調し鮮やかに鳴らすことを重視しているリスニング傾向の出音に感じます。
■帯域バランス
高域 = 低域 >= 中域
帯域バランス的には一聴した感じ全帯域ほぼ均等に出ている印象を受けますが、わずかに中域が控えめと感じることがあります。
中域はボーカル、楽器ともに原音忠実でどちらかというとドライな鳴り方をするため、比較的特徴的な鳴り方をする低域と高域に注意を持っていかれがちです。
低域は量的には十分でサブベース帯域までしっかりと出ています。中域には重なることなく音場の下の方で柔らかく自然に広がり空間を満たす感じの鳴り方で、アタック感は多少控えめです。
高域は好き嫌いが特に分かれそうな鳴り方で、量的にもしっかりと出ており非常に明瞭さや伸びの良さを感じる一方で、線が細く、金属質で硬質な刺さるギリギリの鳴り方をするため、楽曲によっては悪目立ちし耳障りに聞こえることがあります。
■音場・定位・解像度
音場はイヤホンとしては広めで、これは柔らかく広がる低域と伸びの良い高域、および、各音の余韻や響きなどの残響音/付帯音をしっかりと表現することによって実現されているのではないかと思います。
近くに配置されがちなボーカルについても適切な距離感を感じます。
定位感は十分良いですが、残響音/付帯音の影響か若干音像が曖昧になることがあります。
解像度についても十分良いですが、こちらも定位感と同じで残響音/付帯音の影響か音源の音数が多い場合などに多少のごちゃつきが感じられることがあります。
■音漏れ・遮音性
ダイナミックドライバを搭載しているにも関わらず、イヤホン本体にベントや継ぎ目が無いことは音漏れ耐性と遮音性に貢献していると思います。一方で、装着時の耳への密着度は高くなく、差し引きとして密閉型のイヤホンとしては平均程度の音漏れ耐性と遮音性になっていると思います。
騒音化での移動(電車など)を伴うポータブル用途の場合、音量を上げないと多少外音が気になる場合があり、音量を上げた場合にはある程度の音漏れが発生する可能性があります。
■装着感
筐体が比較的大き目で独特の形をしており、金属製で重量もかなりあるため、しっかりとフィットするイヤーピースを選ぶことが重要となります。
イヤホン本体の耳側の面の接触面積は少なめで、イヤーピースやノズル付近の部分とケーブルの耳掛け部分でイヤホンを支える形になりがちです。
幸いにも、純正イヤーピースが2種類付属し、サイズも細かく分けられているため、ほとんどの人は純正イヤーピースの中に快適なフィット感を得られるものが見つけられると考えられます。
■その他、備考
基本的にはどんな音源でも一定以上のレベルで鳴らすことのできる基本性能の高い万能機です。
音源そのものの録音やマスタリング状態があまり良くないものについても、ある程度良い感じに鳴らしてくれる度量の深さを感じます。
ただし、高域の質そのものが好き嫌いが分かれがちだと思われる点や、良く聴く音源自体の高域の量が多めの場合はかなり刺激的な鳴り方になる可能性があるため、購入前にはその点を確認すべきだと思います。
また、筐体がフェイスプレート部以外は鏡面加工がされており、かなり丁寧に扱っているつもりでもいつの間にか細かい傷だらけになります。
少しの傷もつけたくない方は、使用後は柔らかいポーチなどに左右の筐体がぶつからないようにしまって保管することを徹底した方が良いと思います。
上記音質傾向のレビューはWAGNUS. Zillion Sheep NU-3で接続した場合についてですが、純正ケーブルの質も十分高く、満足できる音質です。