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中古カスタムIEMのススメ

[Tips] 中古カスタムIEMのススメ

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自分の耳型を取って作成するカスタムIEMはイヤホン沼にハマった人間にとってのひとつの憧れであり、一度は手にしてみたいと考える方も多いのでは無いかと思います。自分の耳型から作成されることもあり、装着感や遮音性はユニバーサルタイプと比較すると非常に良く、イヤーピースを使わないためよりダイレクトにイヤホン本来の音色が楽しめる傾向があり非常に魅力的です。

一方で、耳型を取る料金に加えて、イヤホン本体についても特注品となるため基本的にはユニバーサルタイプよりも割高ですし、注文から納品まで1~3カ月程度かかり、完成した製品が一度でうまくフィットするとは限らないため、リフィットを繰り返したりしているとさらに数カ月経過するなんてこともざらにあると聞きます。更には、不要になって手放す際にリセールバリューが非常に低く、定価の1/3以下で買い叩かれてしまうことも非常に多いです。これは、特に個人売買では無く店舗で買い取りを依頼する場合には顕著ですので、どちらかというとフリマサイトの方が中古のカスタムIEMは良く見かけます。

購入する側からすると定価の1/3以下という価格非常に魅力的で、自分が常々購入したいと考えていたモデルのカスタム版が売られているのを見ると、他人の耳型に合わせて作成されたものですが、どうにかして使用できないかと色々と考える訳です。

他人のカスタムIEMを使用するためには主に以下の方法が考えられます。

  1. 製造メーカーのリシェルサービスを利用する。
  2. 他社製のカスタムIEMのリシェルも可能なメーカー・個人のリシェルサービスを利用する。
  3. 自分でリシェルや加工を行う。
  4. ユニバーサルタイプ用のイヤーピースを利用する。

[1. 製造メーカーのリシェルサービスを利用する。] については、作成した本人のみや、セカンドオーナーまでなど、何かしらの制限があるところがほとんどで、今現在無制限で自社製品のリシェルサービスを提供しているところを少なくとも私は知りません。

[2. 他社製のカスタムIEMのリシェルも可能なメーカー・個人のリシェルサービスを利用する。] については、やはりメーカー純正のリシェルサービスと比較するとどうしてもビルドクオリティにばらつきが出たり、そもそもリシェル可能なイヤホンの種類が人気の特定機種のみや、特定のドライバ構成のもの(フルBAで何ドライバ以下のみ可、ダイナミックドライバは不可、など)に限られていることが多いと思います。また、デザインについては純正のデザインを維持することは難しく、ドライバ以外の内部配線や基盤などについても交換されてしまい、音が大きく変わってしまう可能性もあります。加えて、最近ではもともとある程度他社製カスタムIEMのリシェルに定評のあったメーカーが軒並みサービス終了しているという逆風が吹いています。

[3. 自分でリシェルや加工を行う。] については、最大の障壁はやはり加工スキルで、数をこなさない限りはスキルを向上させることも難しく、一人前のリシェル、フィッティング加工ができるようになるころには、多数のイヤホンの屍が積みあがっていることになると思います。自分でリシェル、加工ができるようになると、完全自作の可能性も見えてきて、趣味として非常に楽しめるようになると思いますが、いかんせんハードルが非常に高いです。

[4. ユニバーサルタイプ用のイヤーピースを利用する。] についてですが、これは非常に低コストで特別なスキルも必要とせず、比較的多くのカスタムIEMに適用可能なため、上記1, 2, 3が適用できない場合にはもちろんのこと、とりあえず試してみる際にも非常に便利な方法だと思います。カスタムIEMのカナル部分(耳穴に突っ込む部分)の先端は、耳穴の大きさの個人差やカナル部をどの程度の長さで作成するかによってバラつきが出ますが、軸が太いイヤーピースを使用することで、多くのカスタムIEMの先端にユニバーサルタイプのようにイヤーピースを装着することが可能では無いかと思います(耳穴が大きくカナル部が短いなどの条件が重なるとその限りでは無く、先端部分を削って細くするなどの加工が必要となるケースがあります)。

軸が太いイヤーピースとして、比較的安価で入手性も良いものとして、SpinFit CP155があります。これは軸の内径が5.5mmと一体どんなイヤホンに使用することを想定されているのかというほど太く、S, M, Lの3サイズから選択可能で、Amazonや一般的な量販店でも購入可能なため、私もこちらを利用しています。

CP500も内径は5.5mmと同一ですが、イヤホンのステム部の凸凹に引っかけるための構造があり内壁がフラットではないため、CP155の方がよりスムーズに取り付けが可能だと思います。

内径は5.5mmですがシリコン製である程度伸びるため、私の場合ですとカナル部の先端の太さが約7mmのVISION EARS ElysiumのカスタムIEM(こちら、せっかくなので後でレビューしようと思います。)に取り付けることができており、音質についても左右音量バランスの崩れや低域がスカスカになることも無く、問題無く使用できています。多少欠点があるとすれば、もともとある程度の太さがあるカスタムIEMのカナル部に、イヤーピースがはまることでさらに太くなるため、耳穴が多少きつく感じ長時間装着していると痛みなどが発生する可能性がある点が挙げられます。

もちろん他人用に作成されたカスタムIEMを使用するにあたり、問題となるのはカナル部の太さだけでなく耳のくぼみ部分に本体部分がしっかり収まるかという点も重要となってきますが、特にカナル部に関してはしっかりフィットしていないと低域がスカスカになって音質に非常に悪影響を与えてしまうため、そこの問題が多くの場合にクリアできる非常に優れた方法だと思います。

気になっていたモデルが中古で販売しているがカスタムIEM版だ、憧れのハイエンドモデルだけど高額で手が出なかったがカスタムIEM版ならとても安く販売されている、などそういった時に背中を一押ししてくれるのではないでしょうか?