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FAudio ダイナミックドライバ 4兄弟 聞き比べ

[比較簡易レビュー] FAudio ダイナミックドライバ 4兄弟 聞き比べ

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みんな大好きFAudioのダイナミックドライバ 4兄弟、Dark Sky、Major、Minor、Passionを聞き比べて簡単に比較してみたいと思います。ぱっと見、色が違うだけのカラバリ製品に見えますが、価格的には4万円程度~14万円程度とかなり開きがあります。はたして価格分の音質差が存在するのか、非常に気になるところです。

■製品仕様・特徴など

筐体形状や採用独自技術(トリプル・アコースティックチャンバー構造)など共通の仕様もありますが、ここでは主に違いのあるポイントをご紹介します。

□ドライバ構成

全てシングルダイナミックドライバの機種ですが、振動版の構造、素材、大きさに違いがあります。

  • Dark Sky : 10.2mm ダブルレイヤー(ファイバーダイヤフラム + D.L.C ダイヤフラム)振動板
  • Major : 10.5mm ダブルレイヤー (ファイバーダイヤフラム + チタニウムダイヤフラム)振動版
  • Minor : 10mm ベリリウムコーテッド・メディカルファイバー振動版
  • Passion : 9mm メディカル・ファイバー振動版

価格が高いほど複雑な構造かつ大きな振動版を採用している傾向が見て取れます。

□ケーブル

Dark Sky、Majorは専用設計の高品質なケーブルが付属します。Minor、Passionの付属ケーブルは皮膜の色は異なりますが、線材としては同じものが使われているようです。

  • Dark Sky : S.S.S. Earphone Cable(銀合金、純銀導体、金メッキ銀合金導体)
  • Major : Black Sprite Cable(軍需用高純度銅導体)
  • Minor : Sliver Plated Litz Cable(銀メッキ銅導体)
  • Passion : Black Jacket Sliver Plated Litz Cable(銀メッキ銅導体)

今回の試聴に際しては、4.4mmバランス接続に環境を揃えるため、それぞれケーブルを変更して試聴しています。

□音導管素材

イヤーピースをはめるノズル部分の素材がMajorのみ異なります。

  • Dark Sky : ステンレス
  • Major : 無酸素銅
  • Minor : ステンレス
  • Passion : ステンレス

筐体や音導管部分にアルミ、ステンレス、真鍮などを用いているイヤホンは比較的良く見ますが、無酸素銅はなかなか珍しい素材なのでは無いかと思います。比重が大きく、素材特有の音鳴りを防ぐことで、低歪で原音に近いサウンドを実現することを目指しているようです。

■試聴環境

□共通

DAP + HPA : Cayin N6ii (A02モジュール) - LINE (4.4mm5極バランス) - iFi audio xDSD Gryphon

□Dark Sky

・接続 : FAudio S.S.S. Earphone Cable (純正付属) 2pin - 4.4mm5極バランス (変換アダプタ使用)

・イヤーピース : FA Instrument+

□Major

・接続 : FAudio Black Sprite Cable 8 wired (純正付属の8芯版) 2pin - 4.4mm5極バランス

・イヤーピース : FA Instrument+

□Minor

・接続 : Beat Audio Supernova MKII+ 2pin - 4.4mm5極バランス

・イヤーピース : FA Instrument+

□Passion

・接続 : Effect Audio AresII+ 2pin - 4.4mm5極バランス

・イヤーピース : FA Instrument

Dark Skyのみ純正付属ケーブルを使用していますが、それ以外については他社製のケーブルなどに変更しています。また、PassionのみイヤーピースがFA Instrumentと旧バージョンのものになります。

■各機種の特徴、比較

今回は数が多いので、いつものまとめ方と異なりそれぞれの機種の特徴をまとめる形式とさせていただきます。

□共通
  • ダイナミックドライバ1発構成らしい、滑らかで自然な出音。
  • 全体的に押し出しが強めで、主にロック、パンクのような勢いが重要となるジャンルを聞くのに適した音質傾向。
  • 平均から広め程度の音場。
  • 耳への収まりが良い、小さく軽くまとまった筐体構造。
  • 耳にあまり押し込まず浅めに装着するタイプのため、イヤーピースへの依存が大きい装着感。
  • 密閉型イヤホンとしては平均から少し悪い程度の音漏れ耐性と遮音性(ポータブル用途では音量を上げすぎなければ使用可能)。
□Dark Sky

全体的に太めで密度感のある力強い音が特徴的です。特に中低域~中高域までのミッドレンジを中心とした範囲が強く押し出されていて、ボーカルも近くとてもエネルギッシュで迫力を感じられます。低域、高域に関しては、質、量ともに申し分ないですが、ミッドレンジが張り出しがちのため、相対的に引っ込んで聞こえる(特に高域に関して)可能性があります。また、サブベース帯域が適度に抑えられている影響からか、ベースラインやドラムのキック、スネアが明瞭に聞こえるため、リズム隊のグルーヴ感を感じやすい音作りになっている印象を受けます。

□Major

広めの音場とサブベースまで良く沈み込む低域、比較的すっきりとして解像感のある中域、しっかりと存在感のある高域と、全体的にワイドレンジでダイナミックな臨場感を感じさせる鳴り方が特徴的です。一般的には低音がすごい機種として有名で、その評判に違わずサブベース帯域の量感が多めで重心が低く感じますが、中低域~中域にかけては意外とスッキリしていて、ボーカルの周りには適度なスペースができ、そこだけ聴くと意外と繊細で空間的な鳴り方に感じます。

□Minor

4機種の中だと最もバランス良く整えられている印象です。Dark SkyやMajorと比べるとすっきりとしてクリアで(それでも平均からするとやや濃いめ)、各音の詳細な描写などの解像感が強調されている印象を受けますが、迫力、臨場感、スケール感の表現では一歩及ばないところがあります。また、音の押し出し自体はDark Skyほど強くはありませんが、輪郭がより強調されてアタック感は少々強めに感じる傾向にあります。

□Passion

他の3機種と比べると、Dark Skyほどのエネルギッシュさは無く、Majorのような圧倒的なサブベースやワイドレンジさも無く、Minorほどの詳細な描写や解像感も感じさせず、各機種の得意分野で比較すると分が悪い印象ですが、ある意味では変なクセが無いと捉えることもできるレベルに収まっています。音色に破綻するところが無く自然でまとまりがあり、ダイナミックドライバ1発と聞いてイメージする慣れ親しんだ音(多少各音の鳴らし方に雑さがある点も含めて)に最も近い印象です。また、中古で2万円以下で購入できることを考慮すると非常にコスパが良く、FAudioの入門機としてもおススメできます。

■その他、備考

個人的に最も良く聞く音楽ジャンルが邦楽のロックで、それとFAudioのダイナミックドライバの機種は非常に相性が良いと思っており、結果的に現行の全機種を揃えるに至りました。ここ数年は長らくフルBA多ドラやハイブリッドのイヤホンを聞いてばかりでしたが、final A8000、糸竹管弦とあわせて、改めてダイナミックドライバ1発の良さを再認識させられた機種群になります。個人的な好みとしては、Dark SkyとMajorが音源そのものや音源をどのように楽しみたいかの気分によって順位が入れ替わる感じの同率1位で、Minor、Passionと続く感じになります。

今回は4機種の比較ということで、各機種の詳細なスコア付けなどは省きましたが、時間が取れれば普段のような詳細なレビューについても書きたいと思います。